【Dialog Café vol.3】 先行する海外のCreditTechはどうなってる?: 中国アリババグループの「芝麻(ジーマ)信用」について話してみた
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【Dialog Café vol.3】 先行する海外のCreditTechはどうなってる?: 中国アリババグループの「芝麻(ジーマ)信用」について話してみた

REASE Inc.

私たちリースは、「個人の信用価値を最大化する」というミッションを掲げ、「信用」という大きなテーマと日々向き合うスタートアップです。これまで、社内イベントDialog Cafévol.1およびvol.2を通じて、「人は何をもって人を信用しているのか?」という素朴で壮大な問いについて対話をしてきました。

「信用」は非常に曖昧で複雑な概念で唯一解が存在しないため、論点も多岐にわたり、イベント時間内に終わらないほど大いに対話が盛り上がりました。一方で痛感したことは、私たちの対話の質を向上させるためには、対話の土台となる見識を広げることが不可欠であるということでした。

そこで今回からは、先行する海外のCreditTechを事例に取り上げて概要をインプットし、気になったポイントについて対話をすることで、先行事例から学びながら理解を深めるべく対話をしてみました。

0. Dialog Caféとは?

日常の業務から一歩離れ、様々なテーマについてリースのメンバーがカジュアルに対話をする場です。一番の特徴は、社員に限らずあらゆる業務形態の人が参加する他、興味があれば社外の人でもゲストとして参加してOK!というオープンさ。

他にも以下のようなスタンスを大切に、毎月一度開催しています。

【Dialog Caféのスタンス】
・ 目的はあくまでお互いの考え方や感じ方を知り、理解を深め合うこと
・ 自分の頭や心にあるものを素直に話す
・ 結論を導く必要はない
・ 無理に意見を絞り出してまで発言する必要もない
・ イロジカルな発言であっても否定する必要は絶対にない
・ 当たり障りのない会話にはならないよう意識する

対話のテーマは、信用やAIなどリースの事業領域に関わるものから、「そういえばこれって皆どう思う?」といった素朴な疑問まで幅広く扱います。

1. 今回のテーマ

今回のテーマは、「先行する海外のCreditTechはどうなってる? 〜中国アリババグループの『芝麻(ジーマ)信用』編〜」。中国アリババグループの『芝麻信用』について概要をインプットした上で、気になったポイントをピックアップし、グループに分かれて対話してみました。

今回の参加者は計12名。社内からは経営陣・ビジネスサイド・開発サイド・AIチーム・業務委託のメンバーが満遍なく出席しました。

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2. 今回のアジェンダ

今回のDialog Caféは、以下のような流れで進行しました。

(1) 中国アリババグループ『芝麻信用』について概要をインプット
(2) グループに分かれて気になったポイントについて対話(グループダイアローグ①)
(3) 全体振り返りセッション(グループダイアローグ②)

このnoteでは、会の進行の順を追って、当日の内容をお伝えしていきます。
※ 前述の通り、Dialogはあくまで対話のプロセスであり、リースとしての公式見解を示すものではありません。

3. 中国アリババグループ『芝麻信用』について改めてお勉強

まずは概要のインプットです。メンバーの1人がまとめてくれた概要をざっくりご紹介します。
※後述する参考リンクからテキストを引用、一部編集して利用している箇所もあります

▼中国における信用システムの構築について

民間主導と政府主導の2つの仕組みがある。

◉ 民間主導による「スコアリング」
今回取り上げる「芝麻信用」が該当する。

◉ 政府・地方自治体主導による「社会信用システム」
代表的な例を挙げると、全国規模のものは「失信被執行人リスト」。各領域での違反者や脱法企業のブラックリストを統合し、企業や個人の信用コード (国民IDや企業IDにあたる) を公開し、さらにそれらの法人や個人の権利を一定範囲で制限するもの。

「幸福な監視国家・中国」:「自由か、さもなくば幸福か?」

▼中国政府による社会信用システム構築の歴史

rease_DialogCafe_v3_中国政府主導による社会信用システム構築の歴史
参考)中国で信用調査機関結ぶ「スーパーハブ」が誕生 

個人の信用調査業務に関しては民間企業ではなく、中央銀行が主導する信聯という手法を採用した背景にあるのが、この8社の実態と国家の方針に大きな隔たりがあったからだと考えられる。

※バイハン・クレジットの株式構造は、中国政府系の中国インターネット金融協会が36%、残りの64%は8社の信用調査会社がそれぞれ8%ずつ保有しており、その中にはアリババ、テンセントの関連会社も含まれている

アリババ、テンセントも集約。中国の信用スコア国家管理に若者たちの本音

つまり、8社の民間企業がこれまで3年かけて積み上げてきた信用調査業務のノウハウや個人情報、今後アリババやテンセントなどのサービスを利用した際に残る個人情報などもすべてバイハンクレジットに集約される可能性が出てきた。

中国政府系企業、アントの信用事業合弁に大規模出資へ

▼芝麻信用(ジーマ信用・セサミクレジット)とは?

アリババグループの関連企業アント・フィナンシャルサービスグループが開発した個人信用評価システム。2015年にスタート。名称は『アラビアンナイト』の「アリババと40人の盗賊」に登場する呪文「開けゴマ」に由来。

スコアを集計するためにアリババのサービスからのデータを利用。ユーザーは、ソーシャルメディアでの言動やアリババグループのウェブサイトでの購入または関連企業のアント・フィナンシャルのモバイルウォレット「アリペイ」での支払いなど様々な要素に基づきスコアを受け取る。

Wikipedia『芝麻信用』

高スコアを得ることに対するインセンティブ例としては:

インセンティブ_1
インセンティブ_2
参考)中国社会信用スコア最前線

信用情報のネガティブ面のチェックよりも、行動を「良い方向」に導こうという明確な意図を持っている点が大きな特徴。

「信用」が中国人を変える

▼アリペイについて

アリペイは既に個人の金銭授受のほとんど全領域に関与している。購買履歴や資産、納税、公共料金などの支払い状況、もし借入金があれば、その詳細、返済に関するホワイト、ブラック情報なども把握できる。

極端な例では交通違反の反則金の納付状況まで分かる。さらに個人間の資金のやり取りも記録に残るので、どのような社会階層、どのような資産状況の人間と日常的な交友があるのかも分かる。

「信用」が中国人を変える

▼スコアリングの仕組み

アリペイでの支払い履歴(ホワイトおよびブラック情報)のほか、個人の学歴や職歴、住宅・マイカーといった資産の保有状況、交遊関係などをポイント化して信用度を350~950点の範囲で格付け。スコアを与信や金利優遇などの判断材料にする。本人にも公開している。

「信用」が中国人を変える
芝麻信用の実際の画面

芝麻信用のスコア算出に使われているアルゴリズム自体は企業秘密となっているが、大まかなスコア算出の基準は公表されている。

基準は5つのカテゴリーに分かれており、年齢や学歴や職業などの身分、支払能力、クレジットカードの返済履歴などの信用履歴、SNSなどでの交流関係、普段の生活での行動傾向、で構成されている。

スコア

具体的には、以下も算出に使われていると言われている。
> 保有する資産の状況
> 公共料金の支払状況
> 電子決済の支払いデータ
> 購入した商品のデータ
> SNSやアリペイ上での友達の数や質("友達"のスコアもかなり重要)
> シェアリングエコノミーの使用状況
> 裁判記録や交通違反記録

中国社会信用スコア最前線

▼信用スコアがなぜ使われるサービスになるのか?

◉ 中国の社会的背景

中国社会のプライバシーに関する観念の違いがある。「快適かつ安全な社会の実現はプライバシーに優先する」のが現在の中国社会のコンセンサス。

「信用」が中国人を変える

◉ 中央政府による下支え

例えば、中国の裁判所はアリババと連携しており、裁判所が罰金刑を科した者が罰金を期日まで払わず滞納した場合、信用スコアが下がる。また、結婚相手の信用度を探る際も、以前は出身・学歴・社歴・住まいなど様々な観点で質問をしていたが、中国ではスコアを聞くだけでその人が信用できるかどうかが分かる。

このように芝麻信用は、民間企業のサービスであるにも関わらず国家権力と結びついているため、中国社会に多大な影響を与えており、進学・就職・結婚といったライフイベントが、スコアによって多大な影響を受けるというほどに中国人の生活や行動様式が変わってきている。

日本でも始まった「信用」の数値化、先行する中国の取り組みと課題

▼実際どうなの?

◉ 芝麻信用は、中国外でのセンセーショナルな報道のされ方に反して、中国国内では「便利なプラットフォーム」として認知されている。「監視社会」「デストピア」は報道によって作られた認知とも言えそう。

実際、芝麻信用の普及によって起きたことは「それまで銀行のサービスを受けられなかった学生や零細商店への少額融資の実現」や、「参加者の相互評価によるシェアエコノミーの信頼性の向上」といったプラスの効果である。一部で懸念された所謂「スコアによる二極化」、つまり低スコアの人たちがあらゆるサービスから排除されるのではないかという危惧は、現実にはほとんど起きていない

「幸福な監視国家・中国」:「自由か、さもなくば幸福か?」 

◉ 人々の生活に起きた変化

  - シェアリングサービスのマナー向上
  - ホテルの手続きにかかる時間の短縮
  - 法人の信用力にも芝麻信用
  - 従来、銀行のサービスを教授できなかった学生や零細商店への少額融資

芝麻信用(ジーマ信用)とは | Alipayに搭載・中国の信用スコアサービス・社会のマナー向上にも

◉ 抱える課題

・スコアを高めるために手段を問わず行き過ぎた行動に出てしまう人も少なくない

基本的にアリババ系企業を利用すればするほど「評価」されるため、淘宝(タオバオ)で商品を購入する、支付宝で水道光熱費を支払う、アント・フィナンシャルで貯蓄や債券を購入するなどの行為によってスコアが確実に上がる  →  つまり、系列企業以外での消費行為が「評価」されないという仕組みになっている

点数化基準の一つである「行為偏好」(消費の特徴や振り込みなど) が全体評価の25%を占めている

・データの過剰収集になる可能性がある
・スコア向上のため履歴を偽る(例:高級車の購入歴を偽装するなど)
・そもそも農民などは銀行やクレジッドカードの履歴が無いため、サービスへのアクセスが限られてしまう
・高学歴・高所得層・官僚などのスコアが高くなる一方、所得の低い人は社会的信用があってもスコアが上がりにくい

第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長 補論 中国の事例

4. 気になったポイントとグループダイアローグ

中国アリババグループの「芝麻信用」について、サービスの概要から背景、芝麻信用により現在起きている事象など、様々な情報をインプットした上で、参加メンバーから多くの気になったポイントが上がってきました。

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当日のオンラインホワイトボートの様子

こちらの全てを取り上げることはできませんでしたが、ダイアローグが盛り上がったものを幾つかピックアップしてご紹介します。

▼ソーシャルグラフ上の村八分は起きるのか?

🤔: AとBは仲の良い友人だったが、Aの信用スコアが何らかの理由で下がった際、Bはソーシャルグラフの質が低下してしまう=自分の信用スコアが下がることを懸念し、Aをソーシャルグラフから外して友人関係を清算する、といったことは起きるのかな?

さらに、Bが他の友人達に「Aは信用スコアが下がったから友達やめた方が良いよ」と勧めたりするのかな?(ソーシャルグラフ上での村八分

🧐:Aの信用スコアがどの程度下がったかにもよるが、下がった途端に友人関係を清算するようなBの人間性についてプラットフォーム側はどのように扱うべきなんだろう?"薄情な人"だったり、"損得勘定だけで判断する人"という側面をどう評価するんだろう?

😃:プラットフォーム側としても、信用スコアに媚を売るような行動を取る人が大量生産されてしまうことは喜ばしいことではなさそうだけど

🧐:いずれにせよ、何一つミスが許されなくて窮屈だよね。。。

😃:でも、よく考えたら中国って共産主義だから、日本の江戸時代にあった"五人組"のような相互観察の性質があり、もともと「五人組のうち誰かが悪いことをしたら報告しなさい」っていう監視社会だったよね。
つまり、国が主導する形で、共産主義の仕組みをデジタルでアップデートしただけ、とも言えるのではないか

🙂:むしろ、デジタルによる自動可視化が進んだことで、騙し騙されるビクビク感や疑心感から解放され、スッキリできて良かったと感じてるのかな?

🧐:良くも悪くも変化が起きた訳だけど、ポジティブ/ネガティブあるが、総合的にはポジティブに捉えられてたりするのかな?

※この点については:
中国ではいまだに、児童誘拐や人身売買が大きな社会問題で、年間約20万人の子どもが行方不明になっているとの報道もある。幼稚園や小学校は、誘拐を心配して両親や祖父母が送り迎えしているほど。

また、交通ルールを守らないドライバーによる事故や無断駐車、暴走運転などで渋滞が起きることも少なくない。

このように、中国には社会問題が依然として山積しており、監視カメラについても「誰が一番困るかといえば、犯罪者やルールを守らない人間だ。真っ当な生活をしていれば何の影響もない」という声が多いのも事実としてあるようです。
参考)アリババ、テンセントも集約。中国の信用スコア国家管理に若者たちの本音

▼Opt-outできない社会って辛くないか?

🤔:ある日、「私はもう疲れたのでこのシステムから降ります」と離脱した際、システム側としてはそれをどう判断するのかな?

🤓:ネガティブな理由ではなく、シンプルライフに憧れてデジタルから距離を取りたいから離脱したのか、何かマズイことをしでかして離脱したのか判別できないよね

🤔:さらに、例えば、離脱により信用スコアが削除されてしまったが、数年後に銀行で住宅ローンを申込んだ際、それはどう扱うのかな?
とか色々考えると、結局Opt-outはできないんじゃないか?やっぱり窮屈だよね。。。

🧐:でも、別の見方をしてみると、今みんな貨幣経済社会に生きているが、「私はお金が嫌いだ」と考える人が携帯を買うためにショップに行って「お金は無いけど昨日獲った猪の肉を持って来たからこれと物々交換してくれ」と言っても、その取引はなかなか成立しないよね?と考えると、結局システムからは逃れられないし、Opt-outできないことはある意味デフォルトなんじゃないかな?

🤔:それを「窮屈だ」と捉えるのか、「社会のシステムってそういう(逃れられない)ものだよね」と捉えるのかという話になるが、みんな納税や法令遵守の義務からは逃れられないし、それが嫌ならその国から出ていくしかないってことにもなるよね?

🙂:社会がアップデートされたら、アップデートされた社会の中で生きていくしかないのでは?

🧐:Opt-outを可とするのか、不可とするのか、はプラットフォーム側の意図や意思を超えてくる側面が有りそうだね。
 キャズムを超えた瞬間に、ユーザーから「この信用スコアの仕組み何とかしてくれ!」と言われても、プラットフォーム側としても「そこはもう私達でもどうすることもできません....」ということになってしまうのかな?

▼信用スコアと距離を置きたいなら、現金による取引を選択するという方向性はどうなんだろうか?

🤔:  その余地が残されていることは大事だよね

🧐:とは言え、お金が非合法に生み出されたブラックマネーだとしたらどうなんだろうか?お金に色は無い(トレーサビリティが無い)ため、そのお金がクリーンなものかブラックなものか分からないよね

🤔: 非合法にお金を稼ぐ人は、信用経済社会において極めて信用度の低い人とみなされるが、大量の現金があれば結局は信用経済社会においても困ることは無いから、非合法でもお金を稼いだもん勝ちじゃん!
信用スコアを気にして色々と煩わしいことをケアする必要も無いし、信用スコアに基づく信用経済社会をハックできてしまう、という側面も考慮するべきなのかな?

🙂: これに対してはキャッシュレス化がストッパーになる。キャッシュレス化にはブラックマネーが表に出て来れないようにするという効果もあるので、それである程度ハックに歯止めがかかると言えそう。

5. まとめ

今回のDialog Caféでは、先行する海外のCreditTechの事例として、中国アリババグループの「芝麻信用」を取り上げて対話しましたが、ダイアローグの盛り上がりからも、世界を見渡し、より見識を広げるための取り組みとしては極めて有意義だったと思います。

先行しているからこそ、ケーススタディとして、本格的に信用スコアリングが経済社会に実装された際に起きる事象例が幾つもあり、具体的な情景を思い浮かべながら対話ができた点はとても興味深く、私たちが今後ケアしていくべき課題も浮かび上がってきました(地政学的な観点で日本と中国とでは大きく違う点が多いことから、単純比較や無思考な輸入はできませんが)。

私たちのダイアローグの質を向上させるために価値ある取り組みとして、今後に繋がる企画になったのではないかと思います。

6. 編集後記

今回は半分をインプットパートとして実施した形式でしたが、ダイアローグをしている身としても、あらためてこの記事をまとめている身としても「実際のところはどうなんだろう?」と感じました。

ネット上には様々な記事がありますが、例えば「監視社会の始まりだ」とネガティブに捉えるものもあれば、「民度が高まって生活しやすい国に変わるきっかけになっている」とポジティブに捉えているものもあります。

中国に住む方々は実際どう受け止めているのか?メディアを通してではなくて、直接声を聞きたくなりました。
ということで、なんと次回は番外編として社員の知人で中国は深圳に住む日本人の方に、現地の生の情報を届けてもらう会を行うことになりました。

私達がメディアを通してもった印象との差分がどれほどあるのか?楽しみです。


Dialog Caféは外部の方の参加も歓迎しております。

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