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住宅セーフティネット法改正|その変更点や家賃保証事業者への影響は?

住宅セーフティネット法改正|その変更点や家賃保証事業者への影響は?
家賃保証に携わる方の日頃のちょっとしたお悩みに答える「家賃保証マガジン」今回は、住宅セーフティネット法の改正がテーマです。

2024年5月に住宅セーフティネット法の改正が衆議院本会議で可決・成立され、今後、住宅確保要配慮者を取り巻く賃貸住宅の環境が変わると予測されます。

改正により住宅確保要配慮者が賃貸住宅に入居しやすくなったことで、家賃保証に関する環境も大きく変化するでしょう。

本記事では、住宅セーフティネット法の内容や改正について解説します。記事の後半では、家賃保証会社に求められる対応も紹介しますので、保証業務を取り巻く環境の変化に不安がある人は参考にしてください。

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住宅セーフティネット法とは

住宅セーフティネット法とは、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律です。

住宅確保要配慮者とは、次の人を指します。

  • 低額所得者

  • 被災者

  • 高齢者

  • 障害者

  • 子育て世帯

2024年の改正前までは、住宅確保要配慮者に対する次の2つが法律の柱になっていました。

  • 経済的支援:都道府県による「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する計画」の策定

  • 居住支援:住宅確保要配慮者が入居できる住宅の登録および情報公開、登録住宅の改修や入居への支援、居住支援法人による「家賃債務保証」の実施

つまり、住宅セーフティネット法は、賃貸住宅を借りにくい人のための法律といえます。

2017年に一度改正されているものの、賃貸を取り巻く環境は激しく変化しており、2024年3月8日に改正住宅セーフティネット法が閣議決定され、同年5月30日に住宅セーフティネット法の改正が衆議院本会議で可決・成立しました。

住宅セーフティネット法が改正された背景

住宅セーフティネット法は2017年に一度改正されているものの、課題が多く2024年に再度改正されることとなりました。

改正される原因となった背景は、次の理由です。

  • 高齢者の単身世帯の増加

  • 高齢者の持ち家比率の低下

  • 母子世帯の低所得化 など

参議院が調査した内容によると、2015年現在、65歳以上の高齢単身世帯は約625万世帯であるものの、2025年には約751万世帯になると見込まれているそうです。高齢者単身世帯は複数人の世帯よりも借家比率が高く、単身者3人に1人の割合で賃貸物件に住んでいます。

民営の賃貸物件に転居した人の25%は持ち家からの移転者であり、持ち家から借家に住み替える人が増えています。配偶者が死亡し持ち家の広さをもて余すようになった、不便な立地から都心部へ移ったなどが原因です。

また、2016年現在、母子世帯は約123万あるとされます。母子世帯は一般の子どもがいる世帯に比べ、所得が約半分しかないという統計が出ており、賃貸物件を借りたくても審査に通らないケースもあります。

上記のような課題を解決すべく、住宅確保要配慮者が安心して住める制度を設け、住まいの提供し入居率の向上を目指すのが住宅セーフティネット法の改正の目的です。

改正された住宅セーフティネット法の内容

2024年に改正された住宅セーフティネット法の主な内容は、次のとおりで
す。

  • 市場環境の整備

  • 居住サポート住宅の認定制度の創設

  • 居住支援体制の強化

それでは、改正点がどのような内容なのか詳しくみていきましょう。

市場環境の整備

市場環境の整備とは、主に次のような政策を指します。

終身建物賃貸借の利用促進
・終身建物賃貸借とは賃借人が死亡するまで更新がなく死亡時に終了する契約
・賃借権の相続が発生せずに契約を終了させられる
・都道府県の認可が必要であるものの手続きが簡略化された
・認可が住宅ごとではなく事業者ごとに変更された

居住支援法人による残置物処理の推進
・居住支援法人とは住宅確保要配慮者に対し居住支援する法人
・居住支援法人の業務に、入居者からの委託にもとづく残置物処理を追加された
・残置物の所有者をめぐるトラブルの防止につながる

家賃債務保証業者の認定制度の創設
・住宅確保要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者を国土交通大臣が認定する
・家賃保証が受けやすくなり住宅確保要配慮者の入居率が高まる
・家賃債務保証保険による要配慮者への保証リスク低減

市場を整備することで、大家さんが住宅確保要配慮者に賃貸物件を貸しやすい環境の実現が見込めます。

居住サポート住宅の認定制度の創設

居住サポート住宅の認定制度の創設とは、次のような内容です。

居住支援法人などが要配慮者のニーズに応じ、安否確認や見守りなど適切な福祉サービスをおこなう住宅の供給を促進する
※このような住宅を「居住サポート住宅」と呼びます

・居住サポート住宅に生活保護受給者が入居する場合、住宅扶助費について代理納付が原則となる
・大家さんが直接住宅扶助費を受けられる
・居住サポート住宅に入居する住宅確保要配慮者は認定保証業者が家賃債務保証を原則引き受けてくれる
・家賃保証が受けられれば賃貸物件に入居しやすくなる

居住サポート住宅は、大家さんにとっても住宅確保要配慮者にとっても住みやすい賃貸物件です。

居住支援体制の強化

居住支援体制の強化とは、国と自治体との連携を強め、大家さんと住宅確保要配慮者の居住環境をよくする整備することです。

連携を強める政策としての代表例は、次のとおりです。

  • 市区町村による居住支援協議会の設置を促進する

  • 居住支援協議会が住まいに関する相談窓口で支援をおこなう

  • 住宅と福祉の関係者が連携し居住支援体制の整備を進める など

国だけが動いても大家さんと住宅確保要配慮者の環境は変わらないため、地域との連携が不可欠です。さまざまな政策を実行することで、居住支援体制の強化につながります。

家賃保証会社に求められる対応

改めて、住宅セーフティネット法の改正により、家賃保証会社に求められる対応を大きく3点に整理してみます。

  • 家賃債務保証事業者の認定制度

  • 家賃債務保証保険の活用

  • 居住支援法人との連携

家賃債務保証事業者の認定制度

これまで平成29年に施行された家賃債務保証事業者登録制度がありましたが、新たに認定制度が創設される予定です。認定制度の施行は令和7年の秋頃を予定しているとのことで、それまでに認定の基準や申請方法などを確認して準備を進めて参りましょう。

現段階では、認定の基準として居住サポート住宅の入居者の家賃債務保証を原則引き受けることが求められる等があるようです。

家賃債務保証保険の活用

家賃債務保証認定事業者は、住宅金融支援機構による家賃債務保証保険が拡充される予定です。

現行制度では、家賃債務保証登録事業者は、セーフティネット登録住宅に限り、住宅金融支援機構による保険を最大限7割まで利用が可能です。

この家賃債務保証保険の拡充が検討されているとのことで、活用の方法や事務の整備を進める必要があります。

居住支援法人との連携

大家の不安の一つである入居者死亡時のリスクに対して、残置物処理を円滑に行うため、居住支援法人の業務として入居者からの委託に基づいた残置物処理が現行制度にもあります。

今後、認定制度が施行され認定事業者となった家賃債務保証会社は、セーフティネット住宅に居住する入居者の家賃債務保証を引き受ける際に、これらの居住支援法人との更なる連携が求められると予想されます。


家賃保証クラウドはこれらの法改正に対し、順次アップデート予定です

当該案件の物件はセーフティネット登録住宅なのか?住宅金融支援機構による家賃債務保証保険は対象なのか?エリアによってどこの居住支援法人と連携しているのか?対応依頼やその履歴、請求支払い状況の確認など様々な管理項目が必要になって参ります。

家賃保証クラウドは、クラウド上のソフトウェアサービスのため、個別の開発や改修依頼を受けずとも独自でアップデートをいたします。

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まとめ

大家さんと住宅確保要配慮者を取り巻く環境は変化しており、住宅セーフティネット法の改正につながりました。

2024年の改正では、主に次の3点が政策の大きな柱になっています。

  • 市場環境の整備

  • 居住サポート住宅の認定制度の創設

  • 居住支援体制の強化

住宅セーフティネット法の改正は可決・成立はされましたが、その施行は2025年の秋頃を予定しているとのこと。今後も活発な議論が想定されますので、家賃保証会社は住宅セーフティネット法の改正の動向を注視し、業務にどのような影響を与えるか分析することが大切です。

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